素のAIに「戦略を立てて」と頼むと、それっぽいのに的外れな提案が返ってきます。以前、その素のAIにコンサルの「型」を仕込んで、出力を実用まで引き上げた話を書きました。この記事では、その型の実物——実際に使っている戦略コンサルスキルを公開します。所定の場所に置くだけで、素のAIとのやりとりが変わります。中身、置き方、置く前後の違いを順に説明します。
コンサルファームの職位は、下から アナリスト → コンサルタント → マネージャー…と上がります。アナリストは新卒1〜1.5年目、一番下の役職です。このスキルでAIが届くのは、その「アナリスト級」です。調査・分析・資料化はこなしますが、提案の筋を決めるのはまだ人間、という水準を指します。過大評価しないための線引きとして、先に置いておきます。
ファイル構成
スキルといっても、中身はただのMarkdownです。1枚の本体と、4枚の参照資料でできています。
strategy-consulting-research/
├── SKILL.md
└── references/
├── report_templates.md
├── quality_checklist.md
├── frameworks.md
└── exemplars.md
SKILL.md— 大原則・6フェーズのワークフロー・禁止事項report_templates.md— 調査型 / 提言型 / 提案型の3テンプレquality_checklist.md— レッドチームレビュー用チェックリストframeworks.md— フレームワークと外部事例リサーチの型exemplars.md— 模範資料リスト(経産省委託調査・BCG実物デッキ等)
それぞれが「プロセス」「チェックリスト」「実例」に対応しています。手順を示し、出来上がりを検査し、目指す水準を見せる。この3点で出力が変わります。
置き場所
Claude Codeは、プロジェクト直下の .claude/skills/ にあるスキルを自動で認識します。配布ファイルを、そのままこの場所に展開してください。
(あなたのプロジェクト)/
└── .claude/
└── skills/
└── strategy-consulting-research/
├── SKILL.md
└── references/
└── (4ファイル)
置いたら、Claude Codeを起動して「調査して」「戦略を立てて」「提案書を作って」と頼むだけです。SKILL.md の description に書いた起動条件に依頼が引っかかると、スキルが自動で読み込まれます。特別なコマンドは要りません。
導入前後の違い
同じ「戦略を立てて」でも、スキルの有無で最初の一手が変わります。
- ×いきなり調査・執筆を始める
- ×論点設計をしないまま書き出す
- ×体裁の整ったレポートが一気に出てくる
- ×ただし結語は「今後の動向に注視」
- ✓まずアウトプットの「型」を確認してくる
- ✓論点ツリーと初期仮説を出して一度止まる
- ✓こちらが承認するまで本調査に入らない
- ✓So Whatまで詰めて閉じる
一番の違いは、AIが勝手に完成品まで走らないことです。スキルを入れると、Phase 1(論点設計)に承認ゲートが置かれます。AIはまず「何を解くのか」の設計図を出して、こちらのOKを待ちます。実際のやりとりは、こう始まります。
あなた:自社の新サービスの参入戦略を立てて。
Claude(スキルあり):まず型を確認させてください。これは「提言型(やるべきか・どの方向かを示す)」でよいですか。そのうえで、論点設計を先に出します。
- メインイシュー:このサービスで利益を出せるか、出せるとしてどのセグメントか
- 論点ツリー:①市場は取れるか ②自社の勝ち筋はどこか ③採算は合うか
- 初期仮説:(省略)
ここまでで進めてよければ、調査に入ります。
素のAIで一番こたえたのが「何も決まらないレポート」でした。それが、この承認ゲートで潰れます。何を解くかを先に握るので、着地が「注視」で終わりません。
設計の背景(関連記事)
なぜ承認ゲートを置くのか、なぜ「心構え」ではなく「手順」を渡すのか。その考え方は別の記事に書いています。スキルを触る前に読むと、各ファイルが何のためにあるのかが分かりやすいと思います。
- 型を仕込む考え方 → 「戦略的に考えて」は効かない。AIに効いた指示の書き方
- 型を入れても一発では出ないこと → AIは「それっぽい論理」なら作れる。向きは間違えるが
ダウンロード
以下から取得できます。Markdownなので中身はそのまま読めます。ライセンスは自由で、改変・再配布・商用利用に制限はありません。
社内で使っている版から、自社の実数値・事業名を含む失敗例2節(社内の生データ)は外しています。骨格はそのままです。
自社に合わせた育て方
このスキルの中身は、汎用のフレームワークだけではありません。自分たちの失敗を、その都度アンチパターンとして書き足してきたものです。外した2節も、自社でやらかした具体例でした。財務の読み違い、費用の帰属ミス、立ち上がり途上の事業を早期の数字で切ってしまった判断。そうした固有の落とし穴が、AIへの禁止事項として溜まっています。
配布版は出発点です。自分の事業でAIがやらかしたことを、その都度 SKILL.md のアンチパターンに1行ずつ足していってください。使うほど、自分の現場に合っていきます。