連載: Claude Codeをコンサルとして育ててみた(全4回)

前回、素のAIに戦略を書かせたら、結語が「今後の動向に注視」で終わった。原因はモデルの能力ではなく指示の設計にある、というところまでで終わっている。ではその設計とは何なのか。今回はその中身を書く。

結論から言うと、「考え方を教える」方向は空振りだった。効いたのは行動とアウトプットを規定する方向で、具体的にはプロセス、チェックリスト、実例の3つ。以下、実際に書いたファイルを見せながら説明する。

精神論が効かなかった理由

最初に試したのは、コンサルの思考法を教え込む方向だった。「仮説思考で考えろ」「MECEに分解しろ」「常に So What を問え」。この種の指示をいくら書き足しても、出てくるレポートの質はほとんど動かない。もっともらしい言葉が本文に増えるだけだった。

考えてみれば当たり前かもしれない。「仮説思考で」と言われて動きが変わるのは、すでに仮説思考を身につけている人だけだ。新人に同じことを言っても、たいてい何も起きない。AIに対しても事情は変わらなかった。

効いた指示 / 効かなかった指示

「戦略的に考えて」は効かない。「結論→根拠→具体例→So Whatの順で書け」は効く。抽象度が一段下がるだけで、出力の質はかなり変わる。

CLAUDE.mdに書いた行動規範

Claude Codeは、ターミナル上で動くAnthropicのツールで、claude.aiのチャットと同じモデルが動いている。違うのはローカルのファイルを読めることだ。プロジェクトのルートにCLAUDE.mdを置いておくと、会話のたびにこれを読み込む。

ここに書くのは人物設定ではない。「あなたは優秀なコンサルタントです」と書いても何も起きなかった。書くべきなのは、守るべきルールのほうだ。

数値を記載する場合は必ず出典を付与する。推計値にはその旨の注記を入れる。出典のない数字は書かない。

これは検証できるルールになっている。書かれた数字に出典が付いているかどうかは、読めばわかる。守れているか判定できる指示は効く。判定できない指示は、書いても飾りにしかならない。この一点が、CLAUDE.mdを書くときの基準になった。

スキルに切り出した業務手順

ルールだけでは足りない。手順そのものを渡す必要がある。Claude Codeでは .claude/skills/ 以下に、業務ごとのワークフローを置いておける。今回作った戦略コンサル調査スキルは、こういう構成になった。

strategy-consulting-research/
├── SKILL.md
└── references/
    ├── report_templates.md
    ├── quality_checklist.md
    └── exemplars.md
  • SKILL.md — 6フェーズのワークフロー + 禁止事項
  • report_templates.md — 調査型 / 提言型 / 提案型の3テンプレ
  • quality_checklist.md — レッドチームレビュー用チェックリスト
  • exemplars.md — 模範資料リスト(経産省委託調査等)

3つのファイルが、それぞれ「プロセス」「チェックリスト」「実例」に対応している。手順を示し、出来上がりを検査し、目指す水準を見せる。この3点セットが揃ったところで、出力が目に見えて変わった。

特に効いたのは実例(exemplars)だった。「質の高いレポートを書け」では基準が伝わらない。経産省の委託調査や公開されている実物のデッキを指定して「この水準の粒度で」と書くと、粒度が実際に寄っていく。言葉で説明するより、見本を1つ渡すほうが速い。

承認ゲートの置き場所

SKILL.mdの中身は6つのフェーズにした。型の選択 → 論点設計 → 調査 → 統合 → レビュー → 納品、という流れになっている。

ここでの肝は2番目だ。論点設計のあとに承認ゲートを置いて、人間のOKが出るまで先に進めない仕組みにした。論点ツリーと初期仮説を提示させ、そこで一度止める。調査に入るのはその後になる。

前回、コンサルの仕事を3層に割ったとき、一番上の「論点設定」だけがAIに難しいと書いた。だったらそこだけ人間がやればいい。承認ゲートは、その割り切りをワークフローに埋め込んだものだ。

レポートの品質は、大半が論点の立て方で決まる。逆に言えば、そこさえ押さえれば残りは任せられる。全部丸投げでもなく、全部自分でやるでもなく、効くところにだけ人間の時間を突っ込む。今回の設計は、だいたいこの考え方でできている。

効いたのは心構えではなく行動の規定

AIに効くのは、心構えではなく行動の規定だった。判定できるルールを書き、手順を渡し、見本を見せる。それだけで、同じモデルの出力がまるで違うものになる。

ここまでの作業は、実働で15分ほど。生成を待つ時間を入れても30分で終わっている。ファイルの中身はClaude Code自身に書かせているので、こちらがやったのは何を書かせるかを決めることだけだった。

ではその型で、一発で良いレポートが出てきたかというと、出てこなかった。型を整えても、初稿は初稿でしかない。1回目のレポートには「甘い」としか言えない箇所が残り、2回目では追い風と逆風を取り違えていた。第3回は、3回のダメ出しで何が起きたかを書く。


次の回 → 第3回 AIは「それっぽい論理」なら作れる。向きは間違えるが