連載: Claude Codeをコンサルとして育ててみた(全4回)

前回、追い風と逆風の取り違えは知識量ではなく当事者性の問題ではないか、というところで終わった。だとすれば、モデルが賢くなっても人間の往復はなくならない。最終回では、そこを含めて実験の結論を出す。

先に結論を書いておく。AIはリサーチと構造化なら実用水準に届く。ただし提案の筋の良さは判断できない。だから使い方は、リサーチに期待し、提案は壁打ちしながら直していく、という形に落ち着いた。

型の前と後

Before: 素のFable 5
  • ×市場規模の数字なし
  • ×競合は名前のみ
  • ×収益シミュレーションなし
  • ×仮説の追跡なし
  • ×AI動向への言及ゼロ
  • ×結語が「今後の動向に注視」
After: 型を仕込んだClaude Code
  • 市場規模・成長率を出典付きで記載
  • 競合の価格帯・弱点を分析
  • 収益シミュレーション3シナリオ
  • 仮説を支持/修正/棄却で追跡
  • 追い風と逆風を区別して分析
  • 有識者4人の議論で前提を検証

どちらも同じ「Claude」が書いている。違いは、人間が設計した型があるかないか。それだけではある。

置き換わった層と、残った層

第1回で、コンサルの仕事を3層に割った。実験を終えて同じ表に戻ると、埋まった層と埋まらなかった層がはっきり分かれる。

やらせた結果判定
情報収集出典付きで数字が揃った任せられる
構造化・分析型を渡せば形になったほぼ任せられる
論点設定承認ゲートで人間が介入任せられない

下の2層は、思っていたより素直に埋まった。市場規模を調べ、競合を並べ、数字に出典を付け、判断材料の形に組み直す。この一連の作業は、指示さえ設計すれば繰り返し安定して出てくる。ここは戻れないだろう。

問題は一番上だった。何を解くべきかの定義に加えて、集めた材料から「で、何をやるか」を選ぶところで、精度がはっきり落ちる。事実の網羅と、打ち手の選定は別の能力だった。前者はデータで詰められるが、後者には現場の制約、投下できるリソースの肌感、当事者の直感が要る。追い風と逆風の取り違えは、その象徴的な形で出たにすぎない。

リサーチへの期待と、提案の扱い

この非対称を踏まえると、使い方は一つに決まる。

今回たどり着いた使い方

リサーチはできるが、提案力は低い。リサーチに期待し、壁打ちしながら提案を修正していく。AIに提案を出させて、そのまま採用する運用は、まだ成立しない。

具体的にやっていることは3つある。第一に、提案は1案に絞らせず、判断軸を付けて2〜3案を並べさせる。第二に、それぞれについて「この前提が崩れたら成立しない」という条件を明示させておく。第三に、こちらへの確認事項は、答えを埋めずに問いのまま残す。

要するに、AIには決めさせない。材料と選択肢を揃えさせて、決めるのは人間が引き取る。第2回で承認ゲートを置いた判断は、この方向の先取りだったことになる。

もっとも、これは今回のテーマが自社の新規事業だったから成立している面はある。当事者性のない領域なら、そもそも壁打ちの相手が務まらない。汎用的な結論として振り回すつもりはない。

30分で済む条件

型の設計にかかったのは、実働で15分ほど。生成の待ち時間を入れても30分で終わっている。実費はAPI代の数千円だった。スキルの文章そのものはClaude Codeに書かせているので、人間側の作業は、何を書かせるかを決めて指示することに限られる。

ここで当然、「30分でできるなら、誰がやっても同じでは」という反論が立つ。作業についてはそのとおりだと思う。手を動かす部分に希少性はない。

ただし、身もふたもない話をひとつ。30分で終わるのは、何を書かせるべきかを最初から知っている場合だけだ。今回、指示の中身はほぼ迷わずに書けた。出てきたレポートの良し悪しを判定する基準を、こちらが先に持っていたからだろう。基準がなければ、そもそも15分の指示が書けない。書けたとしても、出てきたものの良し悪しは判定できないままだ。

つまり短縮されたのは作業時間のほうで、必要な経験の量は変わっていない。むしろ作業が30分に圧縮されたぶん、残った部分——何を解かせるか、出てきたものをどう評価するか——の比重が上がったことになる。

連載の結論

「AIでコンサルは要らなくなる」は、終わる部分と終わらない部分がある、というだけの話だった。終わるのは構造化されたレポートを作る作業のほうで、何を解くべきかを決める仕事の希少価値は、むしろ上がるのではないか。AIがスタッフの作業を巻き取るほど、その上の判断が目立つようになる。

そして、AIを使う側の実力は、出てきたドラフトに何を返せるかに出る。追い風と逆風が入れ替わっていることに気づけるか。前提が現実的かどうかを問えるか。この連載で実際にやったのは、結局そこだけだった。1回目のドラフトは、誰がやっても出てくる。差がつくのは2回目以降になる。

型を作るだけなら30分で済む。試してみる価値はあると思う。少なくともドラフトは出てくる。そのあと、出てきたものに何を返せるかで結果が分かれる、というのが今回やってみた実感だ。


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